ディレイは音声信号を時間的に遅延させる音響機器です。 入力信号を遅延し、出力する信号の音声の位相や他のチャンネルとの想定的な時間を変化、制御することを目的として利用されます。
ディレイの原理は、入力音声をデジタル信号に変換し(アナログの場合)、メモリに記録します。 記録した信号を目的の時間が経過した後、出力することで正確に遅延させた音声出力が得られます。
遅延する時間をディレイタイムと呼び、 時間によって位相差や短いディレイによるハース効果、 さらには、音楽のエコーのような効果までさまざまに利用されます。
楽器用のエフェクターで用いられるディレイには、 フィードバックによる繰り返し(エコーのような)や高音を減衰させるハイダンプ、ディレイ時間をLFOで変調する コーラスやフランジャー、フェイザー、 複数のディレイ時間の信号をミックス出力するマルチタップディレイなどディレイを応用したエフェクターがあります。
ディレイのしくみや信号処理についての詳細に興味をお持ちでしたら、音声の信号処理 : ディレイ、エコーをご参照ください。
音量を確保するために複数のスピーカから同じ音を出す場合や、 マルチウェイスピーカーのように1つの信号を分配して複数のスピーカーで音声を出力する場合には、 時間差や位相差を調整する目的でディレイを利用します。
メインスピーカとサブスピーカを次の図のようにメインスピーカーの方が距離が長い状態に配置している時、 音は1秒間に約340mの速さで進むため 受音点ではサブスピーカの音が(L/340)秒早く到達することになります。
ディレイによって信号を遅延させていない状態では、メインスピーカの音よりサブスピーカの音が早く受音点に到達し、音量差と時間差によって、音声が不明瞭になったり、 音源の方向がサブスピーカーの方向に認識されるなど、好ましくない拡声状態になります。
そこで、サブスピーカの信号をディレイで電気的にL/340秒(以上)遅らせ受音点に届く音を揃えます (例:L=34mの場合は0.1秒遅らせる)。この調整により電気音響設備の明瞭性等を向上することができます。
※明瞭性は、建築音響と電気音響の双方の要因で決まります。 この調整は電気音響設備で明瞭度を向上させるために行うことのできる手法の1つです。
タイムアライメント補正は、マルチウェイのスピーカーシステムにおいてウーファ、スコーカ、トゥイータの各 スピーカーユニットから受音点までの到達時間(位相)をそろえる時間補正、調整です。
図のようにスコーカのユニットはトゥイータ、ウーファと比較してそれぞれd1、d2の長さだけ後方に設置されていることため 同時に発音すると位相差が発生します。
マルチウェイ スピーカーシステムの信号は、本来、1つの信号だったものを周波数帯域で分割して スピーカーユニットに分配しているものなので位相差が生じることは好ましくありません。
このような時間差をディレイを用いて、トゥイータは d1 / 340 秒、ウーファは d2 / 340 秒だけ信号を電気的に遅らせることで スピーカから出力される位相差、時間差を補正します。
タイムアライメント補正を行うことで高品位な拡声が実現できます。
映像と音声が放送などで中継されたり、いろいろな機器を経由する場合、映像と音声の遅延時間に差が生じます。 音声回線同士であっても、複数の経路で伝送される音声には遅延時間に差が生じます。
放送のような複数の伝送経路を通過した信号を集めて利用するような局面では、ディレイを遅延時間の差を補正に利用されます。 ディレイによる補正は、音声とは限らず、映像を対象としている場合もありますが、その場合には、映像用のディレイが使用されます。
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