イコライザとは音響周波数特性を変化させる機構や機器を指す一般名称です。 機構に周波数特性に影響を与える構造物をイコライザと呼ぶ場合と、 電気信号の周波数特性を変化させる音響機器を指す場合があります。
ここでは音響機器のイコライザについて記します。 ソフトウェアによって実現されたイコライザは、グラフィックを利用した多様な操作形態がありますが、 ハードウェアの場合には、大別するとグラフィックイコライザとパラメトリックイコライザの2タイプに分けられます。
グラフィックイコライザ(Graphic Equalizer)は、可聴帯域を分割し帯域ごとにレベルを調整できるようになっています。 上下のスライドボリュームが使われ、ノブを上げると中心周波数を頂点とした山型に帯域レベルが上がり、下げれば中心周波数を最下点とした谷型にレベルが下がります。
バンドのノブ位置が周波数で並び周波数特性図を描くようなイメージになるためグラフィックイコライザと呼ばれます。 グラフィックイコライザは略して「グライコ」とも呼ばれます。
複数のバンドフィルタ(BPF/BEF)で構成され、隣接したバンドの影響は重なり、 各周波数の特性が合成された結果が実際の周波数特性となります。
複数の周波数を同時にコントロールした結果は、必ずしもノブの視覚的な位置が周波数特性と一致するわけではありません。 全体の補正状態は、各帯域の補正の電気的合成になっていることを認識しておく必要があります。
グラフィックEQの特徴は、周波数バンドごとの素子の操作方法にありますが、 機器によって、ゲインやQ、トリムなど、チャンネル全体の設定ができるようになっているものがポピュラーです。
Qとゲインによっては、広い周波数帯域にも影響するため、 ノブの状態だけでは、実際の特性を直接判断できないため、 グラフィカルにディスプレイされる高級なデジタルミキサーやソフトウェアでは、 グラフィックEQの設定による特性がグラフ表示で解りやすく表示されます。
グラフィックEQのQや全体のゲイン(±12db、±6dbなどのトータルゲイン)などは、 一括して設定できるようになっている場合もあります (高級なミキサーや単体のラックマウント式のEQの場合には設定可能な場合が一般的です)。
コンシューマーオーディオについているグラフィックイコライザは、素子数が少ないものですが、 プロオーディオ、音響設備では、通常1/3オクターブに分けられた30バンドのものが良く用いられます。 各帯域の中心周波数は規格で決められています。
パラメトリックイコライザ(Parametric Equalizer)は、バンドの鋭さQと中心周波数、ゲインを設定して周波数特性を変化させるイコライザです。 略して「パライコ」「PEQ」と呼ばれます。
グラフィックイコライザは、各素子が縦にゲイン制御のスライダーが並びますが、 パラメトリックイコライザは、中心周波数、ゲイン、Qを回転ボリュームで設定するタイプが一般的です。 ミキサー卓やラックマウント式のパラメトリックイコライザは、1chあたり、3〜4バンドが組み合わせて構成されるのが一般的です (ディジタルミキサーの場合には大きな規模のイコライザを利用することが可能になっている場合があります)。
複数のバンドは、LOW(低域)、MID(中音域)、HIGH(高域)のように低域と高域の役割が決められたものと、 中音域の幅広い帯域を周波数を可変設定するタイプものが設けられます。
LOW、HIGHは、バンドフィルタではなく、ローパス(LPF)、ハイパス(HPF)フィルタになっており、 カットオフ周波数以上、以下をカットするような目的に合わせたものになっています。 HIGH、LOWは、シェルビングタイプになっていたり、シェルビングに切替できるものなど機器によって異なります。
グラフィックイコライザと比較すると、パラメトリックイコライザは、中心周波数と特性がフレキシブルなため、 特定の音域をピンポイントで調整が可能です。
ハウリングの発生する周波数を急峻にカットする場合や特定の目立つ周波数を調整する場合など、 ゲインを下げて中心周波数を移動すると、問題の周波数に位置した時に効果がかかるため、 適した周波数のみを音を聞きながら制御する場合に便利なイコライザです。
複数のイコライザを利用した結果は、当然ですが合成された特性になります。
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ディレイの内容は、別のページに分割、移動しましたのでお手数ですが、 ディレイ - 音響機器 のページをご覧ください。 また、音声の信号処理に ディレイ、エコーについて記していますので併せてご覧ください。
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