このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64(2002年8/15〜2004年11/18)に音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
ヤマハからデジタル・サウンド・プロジェクタという40個のスピーカアレイで仮想音源を作るホームシアター向けの製品が発売されます(2004年11月掲載時)。
▼ヤマハ、壁や天井に音を反射させる5.1chシステム
−音波のビームを放出し、1筐体で5.1chを実現
インプレス AVウォッチ 2004年11月16日
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20041116/yamaha.htm
以前から、仮想音源(バーチャルサラウンド)を作るタイプのコンシューマ製品はありますが、スピーカ・アレイを使ったものは記憶にありません(トールボーイのスピーカの多いものとは性質が違いますし、他者のスピーカ・アレイ製品は家庭用製品ではなかったと思います)。
3つのプリセットモードで動くとのことですが、40個のスピーカをもう少し自由に制御できるような製品だったらユニークに音像を作って楽しむということもできて面白いかもしれません(ゲームなどで使えるようにしてあげると嬉しい人もいるでしょう)。
さて、前回に続いて、デジタルスピーカの特徴について続けます。
デジタルスピーカは、伝送経路がデジタル信号になることが最大の特徴であることは言うまでもありませんが、それに伴って信号配線がパワーラインではなくなることの利点があるということを述べました。
デジタルの信号線は、ノイズ耐性が強いというだけでなく、例えば光ファイバーのように伝送線も利用できますし、出力信号線としてだけでなく、双方向の通信線にしたり、ネットワーク化するなど、高度な応用が単純な配線で可能になります。
信号に複数の音声信号を送出してスピーカ配線を簡略化することや事故に備えて多重経路による配線をすることもパワーラインで実現するよりも容易です。
複数のスピーカを
1本の信号線から分配
別の経路も配線することで
万一の断線事故時などでも
1箇所の破損で全てが停止
することは回避できる
商用施設などで広範囲や多数のスピーカを設置している場合、個別に故障の検出をするための仕組みが必要ですが、デジタル信号線の場合には、通信線と信号線を兼用とすることが可能なため(仕様によりますが)故障検出経路も簡略化できる可能性があります。
デジタルスピーカにDSPを搭載することで、スピーカの補正や音場調整のためのディレイやEQ、コンプレッサやリミッタなどの調整用の機能を個々のスピーカに内蔵させることができます。
調整機能を内蔵すると、放送用機械室にはアンプや調整用信号プロセッサなどが不要になりますから、かなり小規模にすることができます(分散するデメリットが生じるかもしれませんが、元々スピーカの位置にはスピーカがありましたから)。
スピーカは通常、複数のスピーカで1つの音場エリアが作られることが多いのですが、ディレイなどの調整が異なるため、同じ音源ソースを流すとしても同じ信号線を分配するということはできません。
DSPを内蔵し、調整をスピーカで行うようにすると、同じグループの音源ソースは1種類の信号で良いことになりますから、先に述べたような分配配線も多チャンネル信号を扱うことができるからというばかりではありません。
多チャンネルを伝送するためには、高速なデータ転送速度が必要になりますが、同じ信号で済んでしまうために実際には放送されている元のチャンネル数分の回線のいくつかを送信できれば良いことになります(全てを1本でチェイン接続するというわけには行かないと思いますから冗長性を持たせる意味でも)。
音響システムやオーディオ、AVに関連した雑記
「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64に 音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
音響測定、音圧レベル分布、伝送周波数特性
「アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ」のvol.1〜10に連載していた 音圧レベル分布と伝送周波数特性に関連したコラムをサウンド コラムのページに編集して掲載しました。
サウンドコラム 音響測定編 音圧分布音圧レベル(SPL)、オクターブバンド、dB、ノイズ |
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