このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64(2002年8/15〜2004年11/18)に音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
デジタルアンプとデジタルスピーカについての話題を続けます。 前回は伝送系と構成についての特徴でした。今回は、最初にも大きな特徴の1つとして挙げました効率についてです。
電力効率の良いアナログのB級アンプの出力段は±半波に対応するアンプを2つ組み合わせて全波の信号の増幅を行っています。
プラス側はゼロからプラス最大値まで、マイナス側はゼロからマイナス最大値までの信号を分担して増幅出力したものを合わせてプラス、マイナスの信号にします。
プラスとマイナスの出力が合成される部分はクロスオーバーと呼ばれます。
2つのアンプの出力を合成するため全く同じ動作をしないとクロスオーバー部分でうまく連続しなかったり、 プラスとマイナスがアンバランスになります(ならないように設計されているわけですが) クロスオーバー部分での歪みをクロスオーバー歪みと呼びます。
┏━━━━┓ +
┌→┃プラス ┃──┐
| ┗━━━━┛ |
出力信号 ─┤ ├─→ スピーカ出力
| ┏━━━━┓ |
└→┃マイナス┃──┘
┗━━━━┛ −
プッシュプル方式は、それぞれを分担する半導体のアンプが使われていますが、 半導体はスイッチのようにオン、オフのレベルでは安定的に動作しロスがなく、発熱が少ない性質があります。 逆にオンとオフの間の中間状態には効率が悪く、熱に変化してロスが生じます。
ゼロレベルと最大レベルでは安定的ですが、途中のレベルでは、ロスとそれに伴う熱が発生します。 「途中のレベルでは」といわれても、アナログの信号ですからほとんどが途中のレベルの信号ですから、ほとんど出力している間中、ロスが発生しているといえます。
パワーアンプのトランジスタには大きなヒートシンク(放熱板)に取り付けられて放熱するようになっていますが、ヒートシンクが必要なパワーアンプの熱はこのようにして発生しています。
デジタルアンプの場合には、半導体はスイッチ動作しかしていませんから、発熱ロスが発生するのはオンとオフの過渡状態の時になり少なくなります。 アナログ波形を増幅しないので中間レベルがなく、ロスが少なくなり熱も発生しなくなります。
ディジタルアンプが効率が良い大きな秘密はここにあります。
さて、半導体は温度によって特性が変化するという性質もあります。 自身の発熱であっても、温度が上昇することには違いないので信号を増幅しているときに少しずつ熱による特性変化をしつづけています。 この熱による変化によって増幅される出力が変動し僅かに歪みが生じます。
お気づきかもしれませんが、特性の変化がプラスとマイナスで別々に発生しているため、クロスオーバー部分も変動しつづけるため、クロスオーバー歪みも微小に変化している状態になります。
デジタルアンプの場合には、先に述べたようにスイッチ動作しかしていませんから発熱は少なく、熱による歪みが少なくてすみます。 クロスオーバー部分が原理的に存在しませんからクロスオーバー歪みは発生しません。これが原理的にデジタルアンプが優れている理由です。
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