インターフォンやコールシステム用にご利用いただくため、 アーティフィットボイスJFHF-EC1401シリーズは、 エコーキャンセラーのコアモジュールと併せてノイズリダクションなどの 音声処理に必要な機能を統合したモジュールとなっています。
インターフォンや建物内コールシステムは、スピーカー通話やハンドセット通話の複合的な用途です。
室外に取り付けられていることが多い小型のインターフォンやコール呼び出しは、 スピーカーとマイクを内蔵した通話器、屋内に設置されるハンドセット(受話器)を持つ形式のものも、 ハンドセット持たずにスピーカー通話される場合もあり、 通話条件としては、呼び出し、応答の操作を伴うため、 TVの電話機能などより距離は近いですが、スピーカー通話時が音響エコーが多い条件です。 居室内の壁面や天井などに埋め込まれるタイプの機器の場合には話者との距離があるため、 広指向性のマイクを感度が高く状態で利用され、エコーや周囲雑音が通話音声に混合しやすくなります。
アーティフィット・ボイス JFHF-EC1401シリーズをインターフォンやコールシステム用途でご利用いただくことで、 音響エコーと周囲雑音に対する通話品質を向上させていただくことができます。
コアテクノロジーのJ-FHF(高速H∞フィルター)は、 ロバストで高速なシステム同定を特長とした適応フィルターです。 J-FHFを用いることで、外乱ノイズ耐性に強く、 スピーカー通話時の悪条件でも良好なエコーキャンセル性能を発揮します。 また、有色音(人の声など)に対する性能に優れ、環境ノイズによる誤差が生じにくく、 エコー成分を抑制することが可能なため、環境ノイズに対応するノイズ・サプレッサーなども 通話音声の劣化が少なく効果的に利用しやすくなります。
音響エコーはスピーカーからマイクに伝搬する反響を含む音声です。 エコーキャンセラーは、スピーカーの音声が空間を伝搬してマイクに到達するエコー成分をマイクの信号から抑制する働きをします。
インターフォンやコールシステムは、コスト的な要求が厳しい製品も多いでしょうから、 エコーサプレッサーや簡易なエコーキャンセラーが利用されることが一般的でしょう。
エコーサプレッサーは、双方の通話音量を比較して発声していない回線の音量を低下させることで 音響エコーを回線の音声ごと目立たなくする技術です。回路が簡易であるという利点があるため、 一概に古い技術とは言えず、現代のデジタルの通話システムでも使われている場合はあります。
双方の回線の音量のみで動作し、多くの場合、 半二重回線のように片側の音声しか聞こえない程度に音量を低下させるように使われます。 そのため同時に発声すると原理的にどちらかの音声が途切れたようになります。 さらに、周囲雑音がある環境では、周囲の音が話すたびに途切れ、接続が不安定な回線のように聞こえます。
適応型エコーキャンセラーの場合には、エコー成分のみを抑制するため、エコーサプレッサーとは異なり、 環境音が上下するような動作はなく、不自然さは解消されます。
しかし、簡易な信号処理のエコーキャンセラーは、やはり、周囲の雑音の影響に弱く、 通話音声に対して周囲の雑音の比率が大きい場合や、突発的な雑音が入力されると、 無視できない誤差が生じ通話音声品質の低下が著しくなります。
このような条件に対応するために、簡易なエコーキャンセラーの場合には、 条件の悪い時にエコーサプレッサーのような動作を追加して音量を低下させたり、 エコーを抑制する機能自体を無効に近い状態にするように対策されているようです。
色々な利用条件での通話品質を課題とお考えの場合には、 エコーキャンセラーの性能を良好なものにすることで通話品質をトータルに改善できる可能性があります。
インターフォンやコールシステムの場合、 ハンドセットで通話する場合には、ハンドセットの送話口から受話口の間を伝搬する送話音声が音響エコーと なりますが、スピーカー通話時のような音量にはなりませんし、話者は口元の近くで送話口に話すため、 エコーの影響は軽佻です。これはコールシステムでヘッドセットを利用されている場合も同様です。
一方、スピーカー通話の場合、スピーカーから少し離れた話者に対して十分な音量を出力し、 備え付けられているマイクも話者とは距離があります。 端末に対して話者が正対するとは限らないため、マイクはある程度広い指向性が必要ですし、 やや距離もあるため感度も必要です。
スピーカーが音量を出しているため、設置されている場所が反響しやすい居室や廊下などの場合、 マイクに入力される反響音(エコー)も大きくなります。 マイクが広指向性で感度が高めになっていると、周囲雑音のレベルも高くなります。
スピーカーとマイクの間の空間で発生した音響エコーは、エコーキャンセラーが無い状態では、 そのまま話者に向けて送信されます。 一般に、音声通話機能は、話者の声量や位置によって送話音声の音量が変化しても音量が適正になるように AGC(自動利得制御)の機能によって小さな音声を増幅して適性化する仕組みが用いられています。 そのため、スピーカー通話の場合には音響エコーの影響に加え、周囲雑音も増幅されやすい傾向にあります。
エコーキャンセラーは、スピーカーからマイクに伝搬する空間の特性(伝達関数)を推定し、 マイクから入力された信号から推定した音響成分を引くことでエコーを抑制する働きをします。
推定結果が完全であれば、100%の差分で完全にエコーが除去されますが、マイクからの入力には、 周囲の音も含まれますので適応フィルターの推定には誤差が含まれます。 誤差の程度は性能やアルゴリズムによって差がありすが、 どのような条件でも完全な結果を得られるアルゴリズムは今のところ発明されていません。 そのため適応フィルターの性能や状況に応じてエコーのキャンセル量は適性な抑制範囲に制御されます。
エコーキャンセラーの性能として推定の正しさがキャンセル性能としてあらわれますが、 誤差は周囲雑音や再生環境によって変化するわけですから、 性能評価は特定条件の一面という性質を持っています。 適応型エコーキャンセラーの性能は、一定条件のキャンセル量のみで測ることは難しく、 推定動作の高速性や、環境の変化への追従性など実仕様上では重要なファクターが存在します。
このような性能は、スペック上での数値から判断するのが難しく、 評価条件が製品の実環境に適している条件とは限らないため、 エコーキャンセラーの性能をご検討の際には、評価版などを実際に稼働させて実環境に近い試験を実施してごらんになることをお勧めします。
JFHF-EC1401シリーズは、音声通話に必要となる、AGC(オートゲインコントロール/自動利得制御) やノイズ低減のためのノイズリダクション機能、 音質調整(EQ)などの音声通話用の信号処理ブロックをエコーキャンセラーと併せて選択して構成していただけます。
音声通話機器はAGC機能によって通話音声の音量を適正化するのが一般的です。 AGCは送話信号で処理されることが多いですが、機器構成のご都合に適合するよう受話側で機能させることも可能です。
環境ノイズ、周囲雑音の低減は、通話音声のS/Nを向上させて聞きやすくするために必要となります。 周囲雑音が比較的低い環境の場合であっても、AGCの効果を強く機能させる場合には送信信号が増幅されるため、 雑音が目立つ場合があります。
アーティフィット・ボイスシリーズは、J-FHFのコア部が雑音に対して誤差が少ないため、 ノイズリダクション機能を適用しても、音質の劣化を少なく調整できます。 内臓するノイズリダクション機能はノイズ・サプレッサーを基本としますが、 エコーキャンセラーコアと統合的に動作し、 ノイズリダクション処理による音声の音質劣化を可能な限り防止するように設計されています。
形態に制限のある音響機器では、スピーカーや筐体の音響的な特性によって、 聴感上、耳触りなピークを持つ特性になりやすい傾向にあります。 このため雑音を含めた音声の周波数特性の調整を行うためにイコライザ(EQ)を送話受話の信号に対して選択して いただけるように用意しています。
アーティフィット・ボイスシリーズの機能構成については 「構成と各部の機能」のページを併せてご覧ください。
アーティフィット・ボイス JFHF-EC1401シリーズは、音声通話機器で必要とされる音声機能モジュールを ソフトウェア・ライブラリとして提供する製品です。 動作環境は多くのプロセッサーに対応可能になっており、 ご要望に応じた機能上のカスタマイズや、設計上の調整などについてもご相談いただけます。
エコーキャンセラーコアのJ-FHFは、演算量の調整が比較的広く対応可能なアルゴリズムです。 ご利用のDSPの演算性能やハードウェアに適合するように調整することも可能です。 詳細なご事情は、NDAを締結させていただいてから伺いますので、ぜひご検討ください。
コアテクノロジーとしているJ-FHFは、JSTによって、日本はもとより、中国、米国、欧州、カナダでの特許が取得されていますので、 海外での特許問題も含めてライセンス契約をいただけばクリアされます。
エコーキャンセラー・ソフトウェア製品についてご不明な点などございましたら、 ARI Artifit Voice担当までお気軽にお問い合わせください。 お客様の秘守に関しましては機密保持契約(NDA)を締結させていただいた上でご相談賜ります。