【Vol.14】2003年8月号 |
「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。
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技術・開発コラム ■ エンジニアの仕事はサービス業 |
このコーナーは、
ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、
技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で
お届けできればと考えています。
とあるページに「エンジニアの仕事はサービス業と気づきました」という1節を見かけました。そのとおりだと思いますが、今回は、この話題で... |
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人にサービスこの1節は、ソフトウェア会社のエンジニア(プログラマ)からシステム・コンサルタントになって、コンサルタントは、SE(システム・エンジニア)より顧客にサービス的で、資料や説明も顧客の立場に立った考え方をするという記事のものです。 プログラマの時には、SEも含めてシステムを作ることに主眼があって、顧客の立場や分析、サービスが十分ではなかったと書かれていました。 「SEより」というのは経験から語られているのだと思いますが、SEによると思いますので(SEの質が良ければ、コンサルタントとして機能していますから)、この比較の部分はあまり重要ではないと思います。 |
問題は、プログラマなど技術、設計、製造など、「もの作り」は技術であって、サービスではないかということかと思います。 ソフトウェアに限らず道具や、嗜好品、音楽や美術品にいたるまで、多くのものは、人に対して何らかのサービスをする目的で作られています。 純粋な自己満足を目的とした「もの作り」は、趣味や芸術には存在するかもしれませんが、ものを提供することで対価を得ている場合は全て、対価を払った人にサービスする「もの」だと思います。 利用する人にヒアリングをして満足の行くものを作ることではなくサービスできる「物を作る」ことが人にサービスをしていることです。 |
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コンサルタントらしく、ヒアリングやプレゼンテーションが顧客の立場を考えたものになっていると実感したということが「エンジニアの仕事はサービス業」と開眼された理由として述べられていました。 記事は、業務系システムやITソリューションというタイプの業種の方のようでしたので、顧客の業務をIT化する場合などは、ヒアリングなどの重要度が高いのだと思います。 顧客にとって望ましいプレゼンテーションやヒアリング、問題解決が重要であることは異論はありませんが(単に比較のSEができていなかったことが問題なのではないかという気がしますが)、シーズ型の製品や、顧客が見出せない課題を持っている対象の場合には、ヒアリングや顧客との十分な打ち合わせといった点を問題解決の中心に考えると成功できない場合があります。 |
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シーズとヒアリングシーズ型の商品を作る場合、まだ世の中にない商品ですから、顧客が理解できないタイプの製品やサービスがあります。 マーケティングのためにヒアリングをすると、商品が生み出す価値やサービスが実感できませんから、適切な回答が得られません。 ヒアリングの方法に問題がある場合もありますが、メーカーは、それが、本当はどのような影響を与えるのかが見えていないけれども、一定の人に何らかの影響を与える、あるいは、利用者が価値を見つけてくれる可能性があるから、自らが結論を出せなくても作る製品もあります。 |
企画段階でヒアリングしても、良好な結果が得られない場合が多々ありますが、作るものは人にサービスするためのものです。 技術者のディレクション技術的な部分に関してグレイゾーンを持つ企画の場合、技術サイドが仕様にかかわるディレクションすることもありますから、技術、設計、製造過程にかかわる人が利用者にどのようにサービスするかを決定している部分があります。 ソフトウェアであれば、プログラマまで含めて人にサービスするものを作っていることを認識して製品を作るという考え方が必要不可欠になります。 |
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このような「もの作り」と人に対するサービスの問題は、技術者であったとしても、常に意識し、いかにして「作っているもの」が、最適な状態で人にサービスできるかを考える必要があります。最適なサービスという中には、もちろん、顧客、もしくはユーザーにフィットしたという意味を含みますから、同じサービスを提供するものであっても、ユーザーにあわせて方法、仕様や用いる手段は異なります。 目に見える顧客とのヒアリングや応対、ヒアリングから生まれる設計などは、サービスとしてわかりやすいですが、それだけに限らず、携わっている物が「人にサービスしている」のだということを強く意識する必要があると考えています。 |
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具体的な例に結び付けなかったので少し抽象的になりました(スミマセン)。それでは、 次回もよろしくお付き合いください。 (^^)
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音と音響の四方山 ■ 過去と周期と予想 |
このコーナーは 音や音響についてのコラムをお届けしています。 あまり指向を決めているわけではありませんので 雑多な感じになりますが、 お付き合いいただければ幸いです。 | ||
テキスト版のアメニティ&サウンドのサウンド・コラムで話題にしたものですが、図があった方が良い(解りにくい)題材でしたので、あらためてHTMLで加筆、再編集してみました(幾分か加筆修正しました)。
▼テキスト版 Vol.35 2003年8月7日 |
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周期予想とピッチ検出音の音程、ピッチの検出の機械は、楽器用チューナーやカラオケの採点機能(歌ったときの音量や音程で機械が採点する機能)などでご存知かと思います。 ピッチ検出の機能は入力された音声の周期性を検出して基音の周波数を求められます。単音のピッチの検出は、かなり単純化した波形にとみなしてしまっても、比較的簡単な技術で比較的うまくできます(下の図よりは実際はもっと複雑な周期波形になりますが)。 チューナーやカラオケ採点機能などでは、リアルタイム性もそれほど高くありませんので(数秒、数百ms遅れても十分なので)波形を予測したり、瞬時に検出する必要がありませんが、楽器音をMIDI出力するような機器、シンセサイザー・ギターなどのような機器では、早期に検出するため予測などが行われている場合があります(詳細はメーカでなければわかりませんが)。 周期を検出するには1周期以上の繰り返しが発生した時に初めて周期性が見出せるにすぎません。 2周期以上のデータがあれば、計算によって周期性を評価することができますが、2周期以上の時間が必要になるため、瞬時に判定する必要がある機器では単純に相関関数など、データがそろっている時に可能な評価だけでは実現できない場合があります。 |
ピッチ、音程と楽譜 - 1 -現在、最も多く利用されている西洋の楽譜には、西洋の12音階形式のものです。 西洋式の楽譜は、特定の楽器用ではなく音程と長さ、簡易な演奏の強弱などが共通の表記で表されていて音楽を記号化して表現するのに便利ですが、ことピッチが音階以外に変化する演奏方法を表現する規則があまり決められていないので、楽譜上に12音階以外のピッチ変化を持つ演奏を表現するのは適していません。 グリッサントやスラーの演奏の場合、一般の記号では、簡略化した表現でしかあらわされません。例えば、ギターでハンマリング・オン(撥弦せずに鳴っている弦のフレットを押さえて音程を変える)で演奏する場合もフレットをスライドして半音挙げる場合も、最も基本的な表記で記載するとスラーに省略することになります(表記を変えることが多いと思いますが)。 音階の話では、インドのシタールの96音階などが引き合いにだされることが多いかと思いますが、96音階という分解能の意図は、12音階の半音以下のピッチ変化を忠実に演奏するために必要なのだと思います。 西洋の楽譜でも、楽器の特有の演奏方法が重要な場合、例えば、ピッチカート奏法(弦楽器が弓で弾かずに指ではじく)やミュート奏法(消音した音)なども特に指定しなければ省略されます。 |
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実際には、フィルタや先の単純化などを行わない場合、ノイズ成分や変調成分があったり、ばらつきなどが含まれますから、一部を見ていると周期性を見出すのはなかなか困難な信号もあります。 予測がはずれたこと7月26日、甚大な被害を出した宮城県の地震では、最も大きい地震となった余震の予想がはずれた点を報道機関が多く取り上げていました(最初の本震と思われた地震より余震の方が規模が大きく、大きな余震が発生しないだろうと予想したこと)。 地震予測には、過去の振動データ以外にも、多方面の観測データがあるとは思いますが、大きなウェイトは過去の余震の観測結果と相関的と過程しての予測でしょう。過去には同地域で最初の振動より大きい余震が発生した観測結果はないとのことですから、先の余震の可能性を予測することは技術的にもかなり困難なのではないかと思います(振動観測以外の地磁気などのデータでは違いがあるのかも知れませんが)。 |
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過去のデータで予測過去のデータから、周期性や先の動向を予想することは、地震や気象現象に限らず、経済などでも行われる最もポピュラーな考え方だと思いますが、過去のデータと相関がない現象と、周期性がある現象であってもデータが1周期に満たない場合などではピッチ検出などと同様、予想や周期性の判断は困難になります。 残念ながら、今回の地震のように相関傾向が無い場合には過去のデータでは予測は難しいだろうと想像しています。 地震に限らず、色々な現象について予想する時、周期性や規則性があるように見える場合でも、一部を見ている可能性があるため、後の現象を予測することが難しいことが考えられます。 例えば、大局的に見ればノコギリ波といえる現象があった時、記録したデータが、1周期に満たない一部であったとすると単純増加や、別の小さい現象の周期にとらわれてします可能性は十分にあります。 |
ピッチ、音程と楽譜 - 2 -ピッチ検出をと楽譜の関係で密接にかかわるものに、楽譜作成ソフトウェアがあります。 楽譜と実際の演奏を考えたとき、ピッチ検出の技術もさることながら、難しいのが、人が見て意味のある西洋楽譜に落とし込むことでしょう。 難しい点は、基本的なことではありますが、2点、小節(厳密に拍を表現した楽譜にするのも、それなりに難しいかと思いますが)のタイミングや音符の長さの扱いと、最初からピッチ変動が大きい演奏方法しているような場合だと思います(ギターのチョーキングだらけの演奏のように)。 楽譜での記号化に関しては、音が出ているタイミングが小節を微妙にまたいでいたり、スタッカート(音を切って演奏するので、実際には、音符の長さより短い時間音を鳴らします)と表記すべきか、符点記号と休符で表記すべきかが大変難しく、人が与えるヒントを抜きに完全な記譜にするのは難しそうです。 |
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上の図のような拡大部分が記録のあるデータだった場合、周期的な上下を繰り返しながら増加すると予想する可能性は濃厚ですが、もっと長期周期の大きな周期性があることを予見することは困難です。ばらつきを考慮した上で先の規則性が見出されているだけに、さらに長いスパンの周期の可能性が見えなくなり勝ちです。 この例では、上昇部分を取り上げていますが、別の部分がデータであれば、また別の予想になることでしょう。 さらに、上の図の観測を続けた結果、倍ほどの時間のデータを入手したとき、周期性と増加性の規則性が確実に見えますので、確信をもって次も増加と予想するわけですが、ノコギリ波なので、あるところで唐突に急降下します。このような現象の周期性は、長い周期の1周期〜2周期のデータがないと正しく予測できないでしょう。 極端な例のように見えるかもしれませんし、架空の例ではありますが、自然現象や社会現象が大きく変動する場合、急激な下降というより、ちょうど、ノコギリ波のゼロクロス部分のように臨界点で一気に切り替わることは少なくないように思います。 経済や自然現象などに関する予測などでも、単純な増減(前年度比など)を根拠に予測されている場合がありますが、根拠となるデータがどのような性質を持つものか(データの期間や対照)、予測の前提とされている根拠は何かを認識することは、その理由と同じように重要かと思います。 ちょうど、先の図のように信号波形をオシロスコープで時間やレベル窓を変えながら見ていると、データの見る範囲や観点で全く違ったものと考えることもあるということを思い出します。 |
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それでは次回もよろしくお付き合いください。 (^^)
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編集後記今回から本文の文字を少し大きくしてみました。そのせいもあって、少し縦の長さが長くなってしまいましたが... なかなか、HTMLでは、紙媒体のように読みやすい文字サイズを全ての環境で実現するというわけには行きませんが、レイアウトに対して支配的な部分を除いては、フォントサイズは、可変になっていますので、万一、ご覧いただくときに文字サイズを変更していただけば、読みやすくなるようでしたら、表示文字サイズを変更してご覧ください(段組の1行の文字数が変化して読みにくい場合もあるかもしれませんが)。 高解像度のディスプレイのシェアが高くなってきていますし、ノートPCのディスプレイもXGA以上のものが廉価になってきていますので、小さい文字だと読みにくいと仰る方も多くなって来ているかと考えて少し大きくしましたが、ご意見などございましたら、お気軽にお寄せください。 今回の音編は、音の関係なのか技術の関係なのか分類が難しいのですが、音関連に分類してみました。 それでは、 次回、2003年9月号もよろしくお願いいたします。
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