【Vol.4】 2002年10月号 音象定位とヘッドトラッキング |
「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、
毎月 第4金曜日にお届けしています。
みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、
今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。
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1 | 技術・開発コラム ■PEUGEOT WRC シアター |
このコーナーは、
ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、
技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で、
お届けできればと考えています。
PEUGEOTは今年の WRC(世界ラリー選手権)において、 全14戦中11戦を消化した現時点で7勝をあげる (2位も3回) という無敵の強さを誇っています。
ドライバーズ部門でも、 M.グロンホルムが最多の4勝でタイトルを決め、 未勝利ながらR.バーンズが総合2位をキープしています。 また、G.パニッツィも3勝をあげる活躍で4位、 H.ロバンペラも6位につけています。 PEUGEOT WRC シアター 2000年11月から2001年2月にかけて開催された 輸入車ショウ2001の大阪、福岡、名古屋 の3会場ではPEUGEOT 206 WRC Theater というイベントブースを プジョージャポンさんが設営されました。 プジョー206WRCのオンボード映像を、 実際のラリー車の座席に使用される SPARCO 社製のバケットシートを観客席に、 約100インチの大画面ビデオプロジェクターで見るという 大変人気が高かったミニシアターです。 このシアターにAURA SOUNDのBassShaker振動ユニット が採用され、約3分間の映像中、 雪道やダートを走行するシーンの 蹴散らされた雪の塊が飛んでくる場面や、 段差を超えてジャンプして着地するタイミングなどで 映像・音響に合わせてシートを振動させるという 体感振動シアターになっていました。 前回のジャンフローラの振動シアターは、 大型の映像シアターアトラクションでしたが、 この PEUGEOT 206 WRC Theaterは 客席7席のミニシアターです。 客席7席に対して、各座席に2ユニット、 台座にもユニットを組込み、 合計20ユニットが組み込まれたBass Shaker のパワーが生かせるシステムとなりました。 ジャパンフローラではパワーを控えましたが、 このときはそのような配慮は無用なお客様 が対象 (本当にそうだったでしょうか?) ということで、パワーを落とさずに振動させ、 そのハイパワーな面でもご好評をいただきました。 座席に振動ユニットを取り付けると、 接触している各所が振動によってノイズを発することが多く、 このノイズを止めるために工夫が必要なのですが、 SPARCOのバケットシートは、 FRP樹脂でできた内部構造なので、 見た目の曲線的な印象とは対象的にFRPがしなって ユニットとの接触面が密接になり、 ノイズも仕上がりも良好な状態にできました。 シートは規格商品ですので、取り付けるためには、 現物や型紙であたって位置を決めたり、 穴あけをするなどの作業が必要です。 このような作業をしていると、 ローテクなのか、 技巧や技術を駆使した匠の技 なのかという疑問が ふっ と沸いて出る瞬間があります。 堺屋太一さんが 「ローテクがベンチャービジネスの最先端だ」 と仰っていましたから... ARIは 「ベンチャービジネスの最先端の制作現場か?」 ですね... (^^; 【謝辞】 会期中、PEUGEOT 206 WRC Theater には各会場とも多くの方にご来場いただき、 盛況の内に無事終了しました。 ご来場いただいた皆様、 ご協力をいただいた関係者各位に、 あらためて御礼申しあげます。
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2 | 音と音響の四方山 ■ヘッドマウントディスプレイと立体音響 後編 |
ヘッド トラッキング というのは、頭の動きを検出する技術です。 右を向けば、先ほどまで前方だった音は左側から聞こえてくるのが 現実の空間ですので、頭の動きを検出してヘッドホンの 音像定位に補正かけるのが、 ヘッドトラッキング技術を利用した定位コントロールです。 人の頭部は完全に静止ししているわけではないため、 厳密には 前方の音源が真に正面方向に位置しているわけではありません。 そのため、ヘッドトラッキングを利用し、 人の頭部のわずかな動きにまで音声の定位を補正すると、 前方定位が改善され良好な定位感が得られるだろう という説がありましたが、説のようには、 うまくは行っていないように見受けられます。 ヘッドトラッキング技術を使用していると一言でいっても、 音量のみ補正しているだけでは、 定位感にそれほど効果があるわけではないでしょう。 頭部周辺の反射やディレイなどの総合的な補正 がされれば、立体音響として良好な音場が作れそうです。 10年ほど前には、 髪の毛での反射をシミュレーションするための 反射素材付きのダミーヘッド 製品が発表されていました (短髪の人は適合しないので、どうかと思いましたが) 、 髪の毛の反射や遮音なども定位感に作用する ということだと思います。 前方定位 前方定位の官能実験では、 被験者に目隠しをして周囲360度にスピーカを配置して 実験した結果が論文で過去に発表されています。 その実験の結果では、 前方、後方は、方向感が弱い という結果になっていました。 別の実験では、周波数特性 によって前方の定位を判断しているため、 周波数特性を個別に調整して被験者に聞かせると、 前方定位の識別が向上 するが、個人差が大きいため、 成人平均値ということはできないという実験もありました。 電子的な信号音だとどこで音がでているのかわかりにくいように、 音色によって定位感が変わることも周知です (これは、 電子アラーム音などで日常生活でも 経験しているので実感できますね)。 現実の空間でも、定位感のない音が存在したり、 前方定位感が弱いということから考えると、 完全な前方定位をヘッドホンで実現するのは、 原理的にもかなり難しい (現実空間でも認識できないような特性なので) ということになりましょうか。 頭外音像定位 頭外音像定位は、かなりリアルにできる場合があることは、 立体音響のデモなどをお聞きになった方ならご存知の通りです (立体音響の音は、 過去に海外で少し流行しましたので、 音響専門のCDでなくても、 ポピュラー音楽のCDでも聞くことができます)。 ヘッドホンで頭の中で音が鳴っているような状態 (頭内音象定位) に対して、ヘッドホンをしていても、 自然に近い距離感のある頭の外から音が聞こえている ように感じる定位を指して頭外音像定位と呼ばれます。 頭外音像定位になると、 ヘッドホン特有の閉塞的な定位感がなくなり、 リラクゼーション音楽などには適しているのではないか思います (ヘッドホンの定位が好きという人もいますので、 一概に良いとは断言できませんが)。 立体音響は何年かに1回技術が進んだ時に注目されては、 沈静化する (定着とまではいっていませんよね) 傾向があります。 現在は、DVDの一般家庭普及によって 5.1chサラウンドの音源が沢山あることから、 ふたたび注目(気味)です。 現代のデジタル信号処理技術とヘッドトラッキングを利用して、 トラッキング補正付きヘッドホンがコンシューマ製品が 登場するると面白いと思いますが、いかがでしょうか。 それでは、次回もよろしくお付き合いください (^^) 。
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編集後記 □■
それでは、次回11月号もよろしくお願いいたします。
(^^)
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