【Vol.3】 2002年9月号 ヘッドトラッキング/振動体感
「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。

■□ CONTENS 【VOL.3】2002.9.27 □□□□□□□■□■□■
1.技術・開発コラム
  振動体感システムの開発
  AURA SOUND Bass Shaker
2.音と音響の四方山
  ヘッドマウント ディスプレイと立体音響
 編集後記
 配信サービスと配信停止
コラム 今回は、製品PRにもなってしまいますが振動体感システムと立体音響についてです。


1 技術・開発コラム ■振動体感システムの開発
技術・開発コラム

このコーナーは、ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、 技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で、お届けできればと考えています。

今回は、システム開発編として、 AURA SOUND社の Bass Shaker という振動ユニットを利用した振動体感システムについてご紹介します (ソフトウェア開発などについてご期待いただいた方には、 今回は申し訳ありません)

オーラサウンド Bass Shaker
AURA SOUND 振動ユニット Bass Shaker Bass Shakerは、米AURA SOUND社が開発したオーディオ信号を制御信号として利用する ハイパワーな振動ユニットです。映像型のアトラクションや、イベントブース、アーケードゲーム などに利用されています。

Bass Shakerの内部構造は、磁石とコイルを持ちスピーカーのような構造になっています。 丁度スピーカとは逆の構造をしていて周囲に磁石があり、振動部がコイルになっています。Bass Shaker にオーディオ信号を入力すると振動部が入力にあわせて振動する仕組みです。

通常は、オーディオ信号にイコライザやLPF(低域通過フィルタ)を通して低音部分のみを利用しますが、 オーディオ信号に合わせて取り付けたシートや台座、床、テーブルなどを振動させますので、 これらを媒介して音を出すことも可能です。 低音部分のみを利用するのは、振動数が多い(周波数が高い)と不快感につながることがあるためです。 音声と振動を同時に利用する場合などでは、中高音域のオーディオ信号もそのまま利用します。

振動システム開発
今回は、ジャパンフローラ2001淡路花博 「都市と緑の館」の開発時のお話を少しだけご紹介します (詳細はホームページの事例をご覧ください)

ジャングルウォークの写真 ジャパンフローラでの Bass Shakerシステムは、「ジャングルウォーク」 という大スクリーンの映像アトラクションに合わせて、 通路兼客席を振動させるというものでした。 鉄骨組みの頑丈な橋に人が大勢乗っている状態で十分な演出効果を出す必要がありますので 非常にパワーが要求されます。

通常、このような方式の振動装置の場合、映像効果音のオーディオ信号を利用するのですが、 ARIでは、より振動ユニットの効果を得ることができるように、 振動用のオーディオ信号を合成する方法をおすすめして各システムでご採用いただいています。

Bass Shakerの特性に合わせた振動用信号にすることで、振動効果には驚くほど差が出ますので、 ユニットの特性を知悉しているARIが技術的なサポート、 お手伝いをさせていただきユニットの力を引き出せるようにしています。

ジャパンフローラの映像シアターでは、合計96ユニットのBass Shaker を設置し、 十分なパワーを引き出せるように準備しましたが、 お年寄りからお子様までを含む観客にとって強力すぎるだろうとの関係者一同の判断から、 実演では出力を抑えた状態で上映されました。

【謝辞】
開期中、「緑と都市の館」には連日多くの方にご来場いただき、 盛況の内に無事終了しました。ご来場いただいた皆様、 ご協力をいただいた関係者各位に、あらためて御礼申しあげます。

ARI PR ARIはAURA SOUND社のBass Shakerの国内ディストリビュータです。
ホームページには、 Bass Shakerのご紹介カタログ プジョー206WRCシアター ジャパンフローラ2001淡路花博 振動体感シアター の例などを掲載していますのでご覧ください。

ARI PR ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発ファームウェア開発 音響システム開発 などをお手伝いしています。


2 音と音響の四方山  ■ヘッドマウントディスプレイと立体音響
音と音響の四方山


このコーナーは、音や音響についてのコラムをお届けします。

前回は、 ヘッドホンモニター についてのコラムを技術・開発コラムでお届けしました。 最近ソニーから、ヘッドトラッキング機能付きのヘッドマウント・ディスプレイ (液晶ディスプレイにヘッドホンも付いています) が発売(9/26発売)されたこともあり、 今回はヘッドホンの定位と立体音響ヘッドトラッキングについてお話したいと思います。

ヘッドアクショントラッカー
ヘッドトラッキングというのは、映像や音を人の頭の方向に補正するために、 頭の方向を検出する技術のことです。 ヘッドトラッキングという技術自体は10年以上前からある技術ですが、 コンシューマー製品で登場したのは記憶にある限り初めてだと思います。

SONYのヘッドマウントディスプレイ「PUD-J5A」は、 ヘッドアクショントラッカー(Head-action Tracker) 機能という頭の上下左右の動きを検出して出力するセンサー機能を持っていて、 PlayStationゲームの仮想空間を演出することを目的としているディスプレイ装置です。 対応ゲームソフトで使用すると、仮想映像空間の全方位を見渡せるようになります。 音の定位にも対応すると思います。

ヘッドホンの立体音響
ヘッドホンを利用した立体音響技術というのは、古くから数々あるのですが、 主に2つの音響、要素技術の組み合わせや応用によって実現されています。

  1.音量と左右の時間差(および位相)
  2.頭部周辺と耳たぶなどによる周波数特性や反射による変化

ステレオスピーカを利用したSRSなどの3D音場のシステムでも基本的には同じです。 スピーカの場合には、聴いている人の左右別々の音になるようにするために 左右の音の分離技術が加わりますが、 ヘッドホンの立体音響と原理は同じです。 スピーカの場合には、 耳に届く音をヘッドホンのような左右独立の音源にするためのキャンセル技術が工夫されています。

1.の音量と左右の時間差は最も基本的な技術です。 最も簡単な例でいえば、左右90度方向の音源の音は、片側の耳に大きな音で早く届きます。 ミキサーのパンポットやオーディオの左右バランスは音量による左右定位です。

このような音量差がステレオ音場の基本であるように、 音量の左右差の支配力が大きいことは容易に理解できます。

左右の差のイメージ 時間差は、ディレイ(時間遅延装置)ダミーヘッド録音を利用した場合の音の到達時間差によって立体感が増すことでも、 やはり、かなり重要な要素であることが判ります。

ところが、正面、背面、そして上下方向は、 左右の音量や時間差では克服できません。 音量も、到達時間も同じ0度と180度(真後ろ)の方向については、 左右の音量も時間も全く同じなので、ステレオの左右の音に差が発生しません。

そこで、2.の周波数特性や、反射などが必要であることが判ります。 頭部周辺の反射や耳たぶの指向性(主に前方を集音してますから) などによって前後などを判断していますが、これは多分に後天的な経験などから学習されたものですから、 人による個体差があります。 機械的に特性をフィットさせることが難しいため、周波数特性などを利用した定位感は、 平均的なモデルを基準に信号処理されています。

立体音響ではおなじみのダミーヘッド録音も、 この2つの要素技術をダミーヘッドを利用することで実現したものです。 ダミーヘッドの大きさや耳の形状もやはり平均的なモデル( 欧州の成人男性の標本調査による平均)ということになります。

ダミーヘッドのイメージ このような立体音響も、斜め方向の距離感や上下感がある立体音響が得られますが、 前後については、ヘッドホンで聞くと頭の中で鳴っているように感じ、 立体定位感はそれほど豊かにはなっていません。

そこで、ヘッドトラッキング技術の登場となります。

...が、急ぎ足でご紹介したにも関わらず量が多くなりすぎましたので、 次回、ヘッドトラッキングと正面定位、頭外定位などについて後編にさせていただきます。 月刊なので、連続物にしないつもりだったのですが...スミマセン(^^;

それでは、次回もよろしくお付き合いください(^^)

ARI PR ARIは、音響設計音響測定、 音響調整など音響関連サービス の業務や、 デジタル機器の開発プロ用音響機器 の販売を行なっています。


■□ 編集後記 □■
今回は、「音と音響の四方山」のコーナーが少し長くなってしまい前後編としました。 マンスリーでは1回完結にするつもりだったのですが... 簡単にまとめることができませんでした。

テーマの選択が大きすぎることは自覚しているのですが、 小さく絞って一般性を持たせると用語説明になってしまいますし... なかなか解っていても力不足は隠せません。

前回のモニターに続き、今回もヘッドホンに関連した話題になっていますが... 決してヘッドホンのコラムをやろうとしているわけではありませんので 寛容にお付き合い願えれば幸いです。(^^)

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お手数をお掛けしいたしまして申し訳ございませんが、 今後ともよろしくお願い申し上げます。

※お詫びと訂正
前回の編集後記に「次回10月号」と誤った予告掲示になっていました。 ここに訂正させていただき、お詫び申し上げます。

それでは、次回10月号もよろしくお願いいたします。 (^^)

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■□ 配信と配信中止 □■

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